解説 - 食品業界の新たな価値「フードディフェンス」
フードディフェンスとは・・・
日本語に訳すと、「食品防御」という意味です。
2001年のアメリカ同時多発テロ以後に、郵便物に炭素菌混入事件が発生し、生物化学兵器の攻撃リスクが高まり、食品に対しての生物化学兵器や人為的な毒物、薬物などの有害物質が加えられ、それを食した人が身体的障害を負う事態を防ぐための考え方です。 日本では、まだ「食品防御」という考え方は、一般的に浸透していませんが、1984年に発生した「グリコ・森永事件」による青酸ソーダや針の混入事件や、近年では2007年「中国製冷凍餃子中毒事件」でのメタミドホスなど有機リン系殺虫剤が検出される事件が発生したが、真相は未だに判明しないままとなっている。
これを機に食品事業者間では、これまでの食の「安全」「安心」の概念とは、異なる「食品防御(フードディフェンス)」という考え方に大きな関心が寄せられるようになりました。 例えば、今までの包装形態を見直し、外部からの異物混入等を防ぐためシュリンク包装を加えた仕様へ変更したり、流通形態を見直したり、と意図的な外部からの危害因子から食品を防御する考え方です。
これからの食品業界は、このフードディフェンスも新たな価値として重要である。
これからの食品安全3要素
- 「食の安全保障」フードセキュリティ
安全な食品を全ての人がいつでも入手できるよう保証し、食品の安全を確保すること。 - 「食の安全」フードセーフティー
食品製造・供給工程における危害因子による汚染の防止や低減を図り、食品の安全を確保すること。 - 「食の防御」フードディフェンス
意図的な外部からの危害因子の混入から食品を保護し、食品の安全を確保すること。
世界のフードディフェンスへの取り組み
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世界保健機構(WHO)
2002年「食品テロに対するガイドライン」が作成 -
アメリカ
2001年アメリカ同時多発テロ発生 炭素菌事件が発生
2002年アメリカでバイオテロリズム法が制定 -
ヨーロッパ
現時点では広範囲な法律があるため新たには考えられていないが、バイオテロの脅威を視野に入れたシステム改善が求められている。 -
アジア
アジア太平洋経済協力会議(APEC)でが、フードディフェンス・ワークショップが開催される。 -
日本
奈良県立医科大学、今村教授を中心に厚生労働科学として「食品によるバイオテロの危険性に関する研究」を発表。人為的な食品汚染に対して、どのように自己防衛が必要か研究されている。